インタビュー

FXは負けるのが当たり前|ゆきひろさんインタビュー

投稿日:

大学生の時からトレーディングの勉強を始めたという著名トレーダーのゆきひろさん。
今回はそのゆきひろさんから、FXの厳しい現実について意見を伺いました。

ゆきひろさん http://yukihiro.hatenablog.com/

「9割のトレーダーは優秀なトレーダーの餌食」

―――よく“9割のトレーダーは負け組”のような言葉を耳にしますが、勝ち続けるトレーダーが1割しかいないのはなぜだとお考えですか?

ゆきひろさん

多くのトレーダーは感情で取引きをしています。
そのため、FXトレードは感情で動く市場参加者からお金をもらう仕事なのです。

つまり自分の感情を出して取引する人はお金を差し出す側にまわります。

これはFXトレードを経験したことのある人なら誰でも納得することでしょう。
FXトレードではアツくなるとたいてい損を出して後悔しますよね。
優秀なFXトレーダーは欲や恐怖にしたがって行動する市場参加者にうまく合わせることで利益を出すのです。
為替市場には感情のままに行動する人たちであふれています。

そして彼らは優秀なFXトレーダーの格好の餌食(えじき)です。
自分を律する力のない人は間違いなく脱落します。

「FXに向いていない人」

―――“感情で取引きをする”という事ですが、具体的にはどのような方を指すのでしょうか?

ゆきひろさん

人にはそれぞれ、向き・不向きがあります。

もちろんそれはFXトレードも例外ではありません。
いったいどんな人がトレードで失敗しやすいのか・・・
そのことを徹底的に研究している人がいます。
その人の名前は「バン・K・タープ博士」です。
金融の世界では非常に有名な方で数多くの本も出版しています。
彼は「マーケットの魔術師」という本の中で、「相場で儲けることのできないトレーダーの特徴」を3つ挙げています。
これは何百人というトレーダーをテストした結果なので、ある程度信頼のおけるものです。

1.ストレスを感じている
仕事や家庭に問題を抱えて常に心配事で頭がいっぱいの場合・・・
そんなあなたはFXトレードで失敗しやすいと言えるでしょう。
なぜならストレスで正しい判断をする力が弱まっているからです。
僕も以前不動産投資をしていたのですが、その時は日々のストレスでFXトレードに集中できませんでした。
なのでこれは身に染みてよく分かります。
FXトレードは特に「思考」と「集中」を必要とする仕事です。
他のことを色々と考えながらできることではありません。
日常で人並み以上にストレスを感じている人はFXトレードをすべきではありません。

2.矛盾する願望を持っている
例えばこのような考えを持っている方はFXに向いていません。

・お金持ちになりたいが失敗はしたくない
・FXトレードで成功したいがリスクは避けたい

FXで勝ち続けるトレーダーは、他人よりリスクを取って、たくさんの失敗を経験しています。
したがって、上記のような考え方は成り立ちません。
こういう矛盾した願望を持っていると自分の中で葛藤が起こります。
「FXトレードで成功したい」vs「リスクを回避したい」みたいな感じで・・・
常に心の中にモヤモヤしたものを抱えることになるのです。
その結果、FXトレードに全力で向かうことができずに失敗してしまいます。

3.ネガティブである
「FXトレードで破産したらどうしよう・・・」
「自分はFXトレードで成功できないんじゃないか??」

こう考える人は潜在意識が邪魔をします。
自分は成功に向けて動きたくても、無意識のうちに心がストップをかけてしまうのです。
ネガティブな人はこの潜在意識を味方につけることができない、失敗するトレーダーの典型的な特徴と言えます。

FXは負けるのが当たり前

―――それでも安易な考えでFXを始めてしまう方が後を絶ちませんが、そんなトレーダーに対してどのようにお考えですか?

ゆきひろさん

ネットで「FXトレード」と検索すると「1日1時間で月100万円稼いでいます」みたいな人がたくさん出てきます。
そしてその人たちは「初心者でも簡単」とか「誰でもサインに従うだけ」みたいなことを言ってきます。
それらを見ると「自分もFXで稼げるんじゃないか」と感じてしまいます。

ですが安心してください。
そこに書いてあることは全部ウソです。

ハッキリ言います。
トレードは難しいです。

めちゃくちゃ勉強してめちゃくちゃ練習したとしても・・・
利益を出せないどころかマイナスが続くなんて当たり前です。

僕は大学生のときからFXトレードを始めました。
安定的に利益を出せるようになるまで7年かかってます。
その間「バカ」「クソ」「〇ね」とチャート画面に向かって叫んだことは数限りありません。
(今でもたまに・・・笑)

罵詈雑言を吐いてモノに当たりながらも歯を食いしばって頑張る・・・
そういうFXトレーダーって思っているよりも全然多いですよ。
それがFXトレーダーにとって普通なんです。

「FXって楽勝じゃん」勘違いしていた僕は当然ながら後に大きな報いを受けます。

―――継続して利益を上げている方でも突然大損失を被ってしまうトレーダーがいるのはなぜだと思いますか?

ゆきひろさん

はい、実は僕もその中の一人です。

僕は過去にFXトレードで大失敗をおかし、精神崩壊したあげくに大損を出した経験があります。
僕が過去に大失敗したのは、何を隠そう「損切りをしない手法」を使っていたからでした。
僕がどういった経緯で精神に異常をきたすまで追い詰められ、FXトレードで大損を出してしまったのか・・・
その恐怖の体験談を当時の状況や心境を交えて詳しくお伝えしていきましょう。


■FXトレード開始。弁当代を稼ぐ。

僕がFXトレードを始めたのは2007年です。
そのとき僕は大学生で色々とお金を稼ぐ方法を試していました。
当時はオーストラリアドルの金利がとても高く、FXキャリートレード全盛期だったので・・・
その流行に乗っかりたくて僕はFXトレードを始めたのです。

ちなみにキャリートレードとは低金利の円で高金利通貨を買い、スワップ金利で儲けるという手法です。
オーストラリアドルの買いポジションを持って毎日500円ぐらいスワップが付くのを僕は楽しく見ていました。
「毎日の弁当代を僕は働かずに稼いでいる!!」と当時の僕はかなり得意げだったと思います。笑

 

■リーマンショック発生!

しかし翌年の2008年、100年に1度の金融危機と呼ばれるリーマンショックが発生!!

100円ぐらいで買っていた僕のオーストラリアドルは、たった3か月で60円ぐらいまで大暴落しました。
そのとき「損切り」なんて言葉すら知らなかった僕は一気に大きな含み損を抱えたのです。

今まで稼いできた弁当代とは比べ物にならないほどの評価損を目の前に、僕はただ元に戻ることを祈るしかありませんでした。
積み重なっていくスワップ金利を毎日確認しながら「いつかプラマイゼロになれ!!」と日々強く念じていたのです。笑

幸いにも僕はFXトレードを始めたばかりで、レバレッジは2倍ぐらいでやっていました。
そのため強制決済まではいかず・・・

5年という長い塩漬け期間を経たものの、なんとかプラマイゼロでその取引を終わることができたのです。

普通の人ならこの経験から以下のように考えるでしょう。
「今回は危なかったな~」
「もう二度とこんな思いはしたくない」
「これからはちゃんと損切りしよう」

しかし僕はめっちゃアホなので以下のように考えたのです。
「レバレッジが低ければ損切り置かなくてもイケる!!」
頭、悪すぎ・・・笑

 

■「損切りしない」がメインの手法に。痛々トレーダーの完成?

それからというもの「レバレッジを低く抑える代わりに損切りをしない」というのが僕のメイン手法になりました。
自分の思惑が外れてもまったく問題なし!!
建値に戻ってくるまで決済しないのでマイナスになることがありません。

「これが聖杯か!!」
「FXトレードって楽勝じゃん」
勘違いMAXで突き進む痛々FXトレーダーの完成です。笑
当然ながら僕は後に大きな報いを受けます。

 

■アベノミクスで状況は急変!

それは2013年のこと・・・

それまで僕はユーロ円を中心に取引していました。
リーマンショック・欧州危機と続き、ユーロ円は長いダウントレンドを形成していたからです。
僕は短期でユーロ売りを繰り返し、コツコツと利益を重ねていました。
もちろん損切りなんてしません。

トレンドに乗っていたので逆行されてもしばらく待てば値が戻ってきます。
一度も負けることなく順調に増えていく証拠金残高を見て、僕は天下を取った気分でした。笑

しかし自民党へ政権交代してアベノミクスが始まってから状況は急変します。
長く続いていたダウントレンドが転換して一気に円安が加速したのです!!
最初は「いつか値が戻ってくるだろう」と僕は余裕の表情でユーロ円のチャートを眺めていました。
でもそんな僕の期待をあざ笑うかのようにチャートはどんどん上昇していったのです。

 

■終わりのない恐怖

長いこと忘れていたあの恐怖の感情がだんだんと僕の心を支配するようになりました。

さらにFXトレードに慣れてきたこともあって僕は貯金の大部分をFX口座に入れていました。
したがってそのときのポジションは昔のオーストラリアドルとは比べ物にならないほど大きなものだったのです。

日に日に増えていく評価損で自分の全財産が食いつぶされていくのを見るのは精神的にとてもツラいものでした・・・
特に今回はオーストラリアドルのときとは違って売りポジションです。
買いポジションであれば「ゼロ」という終着点があるのですが・・・
売りポジションの場合、上にはどこまでもいけるので終わりが見えません!!

「どこまで値が上がっていくか分からない」という売りポジションの恐怖は、「ゼロ」という底がある買いポジションのはるか上を行きます。

 

■精神崩壊。そしてギブアップ(損切り)

気が付くと僕はニュースを見るときに必ずユーロにマイナスとなるような記事を探すようになっていました。
「EUはこれからダメになる」というような記事を見つけては小おどりし・・・
「EUはこれから発展していく」というような記事を見れば「これを書いた奴はバカだな」と自分に言い聞かせて無視したのです。

ユーロ売りのポジションを長い間持っているうちに完全に見方がかたよった状態となってしまいました。

またそれからぼくはFXトレードで破産する夢をよく見るようになります。

マンガみたいにガバッと起き上がっては「夢か・・・」と安心するのです。笑
そんな状態が続く中で僕は満足に眠ることさえできなくなりました。
ベッドに入って目をつむるとどうしてもそのことが不安で頭がいっぱいになる、なかなか寝付けなくなったのです。

こんな精神異常状態でFXトレードを続けていくのは無理だと僕はついにギブアップ(損切り)しました。
ユーロ円の短期ショートでコツコツと稼いできた利益はすべて吹き飛び、さらに大きくマイナスとなりました・・・

確かにレバレッジを抑えていれば強制決済になる可能性は少ないでしょう。
実際にそれを利用した「塩漬け手法」なんかもあったりします。
でもそういった手法はいずれ絶対に行き詰ります。
戦略的には正しくても心がそれについて行けずに破たんするからです。
遅かれ早かれ、僕みたいに悪夢で目を覚ますことになりますよ~

「ナンピン」という史上最低の手法

―――「こういうトレードをしている人はFXに向いていない」という取引方法はありますか?

ゆきひろさん

FXトレードには「ナンピン」という史上最低の手法があります。

まずは「ナンピン」とはどのような手法なのかを簡単にご説明します。
ナンピンとは平均価格を有利にする手法です。
相場が自分の思惑と反対の方向へ動いているときに買い(売り)増しをすることで、平均取得価格を下げ(上げ)ます。
そうすることで、利益(もしくはプラマイゼロ)で逃げやすくなるという理屈です。
例えばこれからドル円が上がると考えて、1ドル100円で米ドルを買ったとしましょう。
しかしその予想が外れて価格が1ドル90円まで下がったとします。
このときに1ドル90円でさらに買い増すのです。
そうすれば買いの平均価格は間の95円になります。
その後は100円まで値が戻さなくても、95円まで戻ってくれば収支トントンでハッピーエンドです。

―――なぜナンピンは史上最低の手法なのですか?

ゆきひろさん

それは破産(強制ロスカット)になる確率が飛躍的に高まるからです。

どんどんナンピンをしてしまうと負けを認めることが困難になります。
「もうこれだけの資金を使ってしまったのだから後戻りできない」
「こうなったらもうこのポジションと運命を共にしよう」
ナンピンを続けると上記のような心境になってくるのです。

その結果、負けるときは間違いなく破産(強制ロスカット)となってしまいます。
特にFXは資金がなくてもレバレッジ(借金)によってナンピンをすることが可能です。
するとさらに破産(強制ロスカット)になる確率は高くなります。
ナンピンをするという事は、その時点でもう負けているという事なのです。

―――他にも「こんな人はFXをやめた方がいい」というのがあれば教えてください。

ゆきひろさん

そうですね、過去の記憶に残る事例で言いますと、2016年6月24日、イギリスはEUを離脱しましたね。

「イギリス国民投票のときにFXトレードをしたら大きく損をしてしまって・・・」という方も多くおられます。
この時にFXトレードをした人は「負ける可能性が高い」っていうのを分かっててやったのでしょうか。

分かっていなかったにしろ、分かってたうえでやったにしろ・・・
そういう人たちはマジで才能ないのでFXトレード辞めた方が良いと思います。

「トレーダーはリスクを取るものだ!!」と言う人。
その通り、トレーダーはリスクを取ってなんぼの仕事ですが、リスクを取るべきときを間違えています。
ああいう大きなイベント時にはスプレッドが極端に大きく広がります。
取られる手数料が大幅に増えるのです。
当然その分だけ利益で終わる可能性は少なくなります。

さらに個人投資家はこういうとき、とても不利な立場に立たされるのです。
機関投資家やヘッジファンドなんかはお金やコネなどを最大限に駆使して情報を取りに行っています。
したがって彼らは僕らよりも数秒から数分早く開票情報を手に入れているのです。
さらに設備面でも勝ち目がありません。

彼らの中には取引所の近くにオフィスを構え、取引所にダイレクトで極太の電話回線をつないでいる者もいます。
注文が殺到するような局面では僕らの注文なんて一番最後に一番悪い条件で約定されるのです。

こんな悪条件が重なっているときに大きなリスクを取りに行くのはバカのすることです。
ちょっと考えたら自分がどれだけ不利な立場にいるか分かるでしょう。
あと「自分はそれでも利益を出せた」と言う人。
そんなの結果論です。

究極、為替相場は上がるか下がるかの2択なので勝つ人だって当然います。
もしそのFXトレードで10万円の元手を100万円にしていたら・・・
あなたは味をしめて、次このような機会があったときに同じようなことをするでしょう。
それでさらに勝てば100万円が1000万円になり・・・
もういっちょ勝てば1000万円が1億円になります。
おめでとう、億トレーダーです。

でも50%の確率で勝つトレードに3回連続で勝つ確率は12.5%です。
8人に7人は途中で失敗します。
しかもその失敗は無一文になる(場合によっては多額の借金も背負う)という極めて重たいものです。
8人に1人はそれに成功して脚光を浴びるので、みんながそこを目指しがちですが・・・
その下には決して日の目を浴びることがない7人の屍(しかばね)が存在するのです。
こういう単純な計算もできない人はマジでFXトレーダーに向いていません。

自分の将来のために今やめておきましょう。

―――ゆきひろさん、本日はFXのリアルな実態についてコメントをいただき、誠にありがとうございました。

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