管理を委託されていた特定目的会社(SPC)の資金約30億円を着服したとして、警視庁捜査2課は17日、元公認会計士で経営コンサルタント「エフコンサルティング」(東京・港、破産手続き中)元社長、二又正行容疑者(35)を業務上横領容疑で逮捕した。
逮捕容疑は「シンプレクス不動産投資顧問」(東京・千代田)が資産運用のために設立したSPC4社の預金管理などを委託されていた今年1月、4社の口座から現金を十数回引き出し、計約30億円を横領した疑い。
同課によると、二又容疑者は横領した現金を個人的な外国為替証拠金取引(FX)などに使っていたという。シンプレクス社が2月に警視庁に告発していた。
二又容疑者は公認会計士を経て2002年にエフ社を設立。エフ社は今年3月に東京地裁から破産手続き開始決定を受けている。
日本経済新聞 2010年5月17日掲載分
特定目的会社(SPC)は、主に資金調達を目的として設立される社団法人を言います。
企業側は資産をSPCに譲渡することにより、企業本体から資産を切り離すことができ、SPCは資産対応証券を発行することで投資家から資金調達を行い、資産運用等で得た利益を投資家に配当するという仕組みです。
今回逮捕された二又正行氏は、投資家の資産管理事業等を営む「シンプレクス不動産投資顧問株式会社」が設立したSPC4社の預金管理を委託されていたとの事です。
二又氏は2010年1月、13回にわたり計30億円を横領し、同年2月、不審な資金移動に気付いたシンプレクス社が警視庁に告発しています。
2010年8月27日、東京地裁は二又氏に懲役10年の判決を言い渡しました。
東京地裁、本間敏広裁判長は「顧客の銀行預金を無断でFXに投資し、損失を被ったことからさらにFX取引で利益を得て穴埋めをしようとした」と指摘しています。
横領した30億円のうち、12億円はFX取引で返還することができたとの事ですが、残りの18億円が損失になったといいます。
調べによると二又氏がシンプレクス社から預金管理を委託されたのは2005年の1月からであり、横領に至るまでには約5年の付き合いがあった計算になります。
さらに二又氏が「エフコンサルタント」を設立したのが2002年なので、実に8年近くもコンサルタントとして活動を続けていたことになります。
公認会計士と言えば大きな企業の資金管理に欠かせない存在ですが、長年の付き合いがあった事を考えると、シンプレクス社と二又氏の間にはある程度の信頼関係が築かれていたのではないでしょうか。
会計士という信用の高い立場を利用した悪質極まりない今回の事件ですが、コンサルタントとして築き上げてきた信用とキャリアを一瞬で棒に振ってしまうほど、FX取引には後に戻れない中毒性があるのかもしれません。
二又氏は2010年4月、公認会計士の登録を抹消されています。