「元手がなくても大丈夫」「主婦でも簡単に毎月100万円」などと人気のFX(外国為替証拠金取引)。少ない元手にレバレッジ(てこの原理)を使って為替を売買するという金融商品だが、もちろん、勝っている人ばかりではない。以下、FX歴1年半の専業主婦、田辺順子さん(仮名・43)の悲しいFX体験告白だ。
とにかく損ばかりです。FXを始めて1年半の主婦ですが、この間に出した損失が、累計で800万円。もう、ここまで損失額が膨らむと、どうしたら良いのか、分からなくなってしまいます。
主人にばれたら、間違いなく離婚です。なんとしてでも損失を取り戻したいので、今は値動きの荒い英ポンド/円のみでデイトレードを繰り返しています。レバレッジは100倍。ただ、8月からは最大レバレッジが50倍に規制されるのが残念です。
本当にどうしたら良いのでしょう……。とにかく早く損は取り戻したい。でも、大きく損をするのが怖いので、常にポジションを持って、1万円の利益が出たら、その時点で細かく利益を確定させています。それでも損を全額取り戻すのに、かなりの時間がかかってしまいます……。気持ちは焦るばかり。それと、損をしたときの対処法がよく分かりません。今は、ポジションを持って損が出た時は、ただひたすら損が回復するのを待っています。損切りは嫌いです。
これでも、以前は大きく儲かったこともありました。やはり英ポンド/円でトレードしたのですが、1か月間で100万円も含み益が出たことがあるのです。ただ、「もっと儲かるかも?」と色気を出して利益を確定させずにいたら、09年に英ポンドが暴落して、それまでの利益をすべて吐き出したうえ、400万円もの損失を抱えることになってしまいました……。その後も、トレードを繰り返していきましたが、そのたびに損失が膨らみ、今では800万円もの損失を抱え込んでしまった次第です。
やっぱり、私はFXには向いていないのでしょうか……。正直、ここまでうまくいかないと、自分はFXに手を出すべきではなかったという後悔の念に駆られます。
マネーポスト2010年9月号より
こちらの主婦は記事の文面からすると、FXをしっかりと調べる事もせずに「主婦でも稼げる」というキャッチコピーに魅力を感じ、安易に取引を始めたと予想が出来ます。
「元手がなくても大丈夫」という謳い文句に嘘はありませんが、「簡単に毎月100万円」、こちらはまずありえません。
そもそもFXは9割が負けると言われる厳しい世界で、残りの1割も負けてはいないだけで、継続して利益を得ているトレーダーはさらにごく一部です。
FXは誰かが稼いでいる分誰かが損をするゼロサムゲームであり、その世界では日々研究を重ね続けるプロのトレーダー達による、熾烈で過酷な闘いが繰り広げられています。
そんな厳しい世界に、簡単に稼げると安易な考えで素人が参戦しても、一瞬でカモにされることは言うまでもありません。
記事に取り上げられた主婦は、まず上級者でも慎重になる値動きの激しいポンドに手を出しており、さらに損切が嫌いとの理由から損が回復するのをひたすら待っていると述べています。
これは「塩漬け」というリスクの非常に高い手法であり、素人がそのような難しい手法で、かつ危険なポンドに手を出すというのは、一切相場を理解していないことが伺える非常に危険な取引と言えます。
そして最終的に2009年のポンド暴落で取り返しのつかない損失を被っています。
「とにかく早く取り戻したい」という焦りがあるとの事ですが、FXは稼ぎたい気持ちが強い人は継続的に利益を上げることはできません。
余裕を持った精神状態で、損失を想定した資金管理が徹底できる状態となり、ようやくスタートラインに立てるという厳しいものです。
こちらの主婦は遅かれ早かれ、大きな損失を出してしまう事に違いは無かったのではないでしょうか。
記事のほうでは「FXに手を出すべきではなかった」とFXとの関わりそのものを後悔していますが、FX自体は善でも悪でもありません。
そして、FX会社や広告媒体による魅力的なキャッチコピーの狙いは、顧客を増やすためのもの、広告収入を得るためのものであり、ビジネスとして何の犯罪性もありません。
今回のケースは、よく調べもせずに「簡単に稼げる」という甘い誘惑に駆られ、大金をつぎ込んでしまった行為そのものに原因があるといえるのではないでしょうか。