FX名目で集めた100億円、どこ行った 詐欺容疑視野
FX(外国為替証拠金取引)への投資名目で集めた約2億円を私的流用し、脱税したとして所得税法違反容疑で逮捕された会社代表らが、出資金100億円以上を集めたにもかかわらず、捜査当局が確認した現金などは10億円未満だったことが捜査関係者への取材でわかった。出資金の運用実態はなく、返金できる状態でもないことから、名古屋地検特捜部は詐欺容疑も視野に捜査を進める模様だ。
所得税約7000万円の脱税容疑で逮捕されたのは、インターネット関連会社「シンフォニー」(名古屋市東区)社長の伊藤正明容疑者(47)と、資金を管理していた石井真人容疑者(43)。特捜部は18日午後、2人を所得税法違反罪で起訴する方針。
捜査関係者によると、2人は3年以上前から投資家に「年利30%越」「利益を配当金で還元する」などと呼びかけ、100億円以上を集めたとされる。FXでの運用はなかったとみられ、投資家に返金した一部を除くと、約60億円が残っているはずだった。
ところが、捜査当局が確認できたのは石井容疑者宅などにあった現金約2億円と、国内の銀行口座の預金約6億円しかなかったという。海外の口座にも数億円あるとみられるが、捜査当局は「出資金が全額戻る可能性は低い」とみる。
特捜部は、出資金をクルージングや投資関連イベントなどに流用したほか、配当に回して新たな出資を募る「自転車操業」を続けていたとみて、資金の流れについて全容解明を進める。
朝日新聞 2015年9月18日掲載分
FX詐欺117億円被害か 愛知県警、容疑の男2人逮捕
愛知県警は6日までに、外国為替証拠金(FX)取引への投資金名目で約2300万円をだまし取ったとして、住所不定の無職、伊藤正明容疑者(47)ら男2人を詐欺の疑いで逮捕した。県警によると、2人は容疑を否認しているという。
県警によると、伊藤容疑者らは「シンフォニー」などの名称でFX取引の投資セミナーを開催。2010年以降、全国の投資家約3000人から約117億円を集めたとみられる。
逮捕容疑は11年12月から今年8月にかけて、「(投資セミナーの)会員になれば、FX取引で高い運用益を上げられる」などと勧誘し、愛知県の会社役員の男性(50)ら3人から2350万円を詐取した疑い。実際にはFX取引の運用などはしていなかったという。
伊藤容疑者らは9月、投資家から集めた資金を私的流用して約2億円の所得を隠し、所得税約7000万円を脱税したとして、名古屋地検特捜部に所得税法違反(脱税)の罪で起訴された。
日本経済新聞 2015年11月6日掲載分
FX19億円詐欺、2人に懲役14年と12年 名古屋地裁判決
FX(外国為替証拠金取引)の投資話で総額19億円をだまし取ったとして、詐欺罪などに問われた投資セミナー企画会社「シンフォニー」(名古屋市中区、現在は閉鎖)の元実質経営者、伊藤正明被告(49)に対し、名古屋地裁は17日、「悪質さは際立っている」として懲役14年(求刑懲役15年)の判決を言い渡した。
ほかに資金管理担当の石井真人被告(45)は懲役12年(同懲役15年)とし、2人に対し、被害額のうち約14億7700万円(同約15億5300万円)の追徴を命じた。
判決理由で奥山豪裁判長は、詐取の意図を否認した伊藤被告に対し「投資の事実はないと認識でき、自らの財産かのように投資金数億円を個人的に使った」と指摘。「2人は架空の運用実績をホームページに掲載するなど、計画性が高い。返済できる見込みもないまま犯行を繰り返し、被害の結果も大きい」と述べた。
判決によると、2人は2010~15年、投資セミナーの会員を介して全国の男女162人に架空ファンドへの投資話を持ち掛け、計約19億3700万円をだまし取った。また、FX投資名目で集めた約2億200万円を申告せず、所得税約7200万円を脱税した。
中日新聞 2017年3月17日掲載分
逮捕された伊藤正明氏は顧客に対し、資産運用会社「コムズジャパン」に振り込んだ資金がニュージーランドの会社「MSI BK LIMITED」でFXによる投資に使われ、それにより得た運用益を配当に回す、とセミナーで説明しています。
ですが実際の構図は、新規顧客から預かった資金を旧顧客に支払うという自転車操業だった事がわかっています。
シンフォニーは新規顧客を獲得するため、投資系MLM(マルチレベルマーケティング)と呼ばれる方法を採用しています。
投資系MLMはピラミッド型の会員組織により紹介や販売を行うシステムで、販売時の報酬が下層から上層へ振り分けられる特徴を持っています。
報酬額は、20万円の投資セミナーに「4人紹介すると10万円」や「60人紹介すると300万円」のように人数に応じて設定されていました。
さらに野外音楽イベントや海外旅行なども企画し、会員どうしの結びつきや信頼を深めていたそうです。
シンフォニーとしては紹介などで新規顧客が入れば資金繰りを継続できるので、会員に対する表向きのケアには気を付けていたのかもしれません。
今回の事件で被害に遭った人数は3000人を超えています。
国民生活センターの調べによると、投資の勧誘は知人から声をかけられるケースが多く、同様の被害は後を絶ちません。
高い利回りを強調したり、高い紹介料が設定されているような投資ファンドの話は、ほとんどが投資詐欺と考えても間違いではないのかもしれません。