外貨預金取引のオンラインシステムを不正に操作し約一億九千万円をだまし取ったとして、警視庁は十二日、電子計算機使用詐欺の疑いで、三井住友銀行大森支店の元副支店長、南橋浩容疑者(54)=東京都新宿区下落合二=を逮捕した。
逮捕容疑は昨年十一月~今年六月、十七回にわたり、銀行の預金端末機を操作し、計約百六十六万ドル(約一億九千万円)をだまし取ったとされる。捜査二課によると、南橋容疑者は容疑を認めている。
南橋容疑者は二〇〇七年から断続的に不正操作を繰り返し、時効になった分も含め、被害総額は十一億円近くに上るという。
捜査二課によると、南橋容疑者はまず、架空会社名義の普通預金口座と外貨預金口座を開設。普通預金口座に手持ち資金を預け入れた。この架空会社が外貨を購入する際、システムに金額を一桁多く入力。水増しした外貨を日本円に戻す操作を繰り返し、差額をだまし取っていた。例えば「8000ドル」と入力すべきところを、ミスを装い「98000ドル」と入力していた。
だまし取った金の一部は現金で自宅に保管していたほか、外国為替証拠金取引(FX)や子どもの教育費などに充てていたという。
国税当局の調査で今年六月に発覚。三井住友銀行は七月に南橋容疑者を懲戒解雇処分とし、九月に警視庁に告訴していた。同行は「本件事態を厳粛に受け止め、深く反省いたします」などとコメントしている。東京新聞 2016年10月21日掲載分
鹿児島県出身の南橋浩氏は高校を卒業後、1980年に平和相互銀行の総合職として入行しています。
その後、住友銀行と三井銀行の合併を経て、三井住友銀行で働いていました。
職場ではコツコツと事務職をこなし、上司からの信頼も厚い社員だったそうで、まじめな姿勢が評価されたのか成城支店で課長に抜擢されています。
後に大森支店で副支店長となり、その大森支店で今回の事件が発覚しました。
自身が開設した架空の法人口座に不正に入金するという今回の手口ですが、行員のミスを修正したことがきっかけで思いついたとの事です。
記事には2007年から不正操作を行っていたとあるため、副支店長になる以前からの犯行という事になります。
2016年12月の初公判では犯行の動機について、「FXへの投資、愛人への譲渡に充てていた」と述べています。
捜査関係者によると、「犯行に手を染める前から借金でクビが回らない状態で、不正操作により清算する意図もあったのかもしれない」と語っています。
メガバンクの副支店長ともなると、十分に安定した収入を得ていたと考えられます。
もし捜査関係者の仮説が正しければ、「FX」と「愛人」がエリート銀行員の人生を転落に導いたと言えるのかもしれません。
捜査陣によると、南橋氏の自宅に踏み込んだ際は3億円がまるまる残されており、さらに口座には2億円の預貯金もあったとの事です。
2016年6月の税務調査により不正が発覚し、懲戒解雇の処分を受けた南橋氏は、その直後に築30年で家賃7万円台のワンルームマンションに引っ越し、逮捕までのおよそ3ヶ月間を過ごしていたと言います。
副支店長という地位と十分な年収を得ていたにも関わらず悲惨な結末を迎えた南橋氏は、どのような気持ちで逮捕までの日々を過ごしたのでしょうか。
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