東京金融取引所が運営する外国為替証拠金取引(FX)市場「くりっく365」にドイツの銀行が誤った取引レートを提示したため損失が出たとして、投資家45人と1法人が銀行と取引所に総額2億円余りの損害賠償を求めた訴訟の判決で東京地裁は5日、請求を棄却した。
判決によると、銀行は平成21年10月31日の取引終了直前、南アフリカ通貨ランドと円の取引で実勢相場からかけ離れた円高のレートを提示した。
原告側は、「銀行のミスが原因で翌営業日の11月2日のランド価格が暴落した」と主張し、取引を停止させなかった東京金融取引所にも賠償義務があるとしていた。
脇博人裁判長は誤表示について銀行の過失を認めたが「11月2日のレートは市場の実勢に基づいており、原告の損失とトラブルとの間に因果関係はない」とした。取引所の過失は認めなかった。
産経ニュース 2015年3月5日掲載分
今回の事件は2009年10月31日、特別変わった様子も無く週末のマーケットがクローズを迎えようとする間際、「くりっく365」の南アフリカランド/円(以下 ランド円)のレートが、突然11.5円付近から3円以上もの暴落を見せたことから始まります。
ですが暴落に関する突発的なニュースも流れておらず、店頭FXのランド円のレートは11.5円付近でクローズしており、異常な値動きを見せたのは「くりっく365」だけという状況でした。
原因は記事のとおりNYクローズ直前、ドイツの銀行が「くりっく365に」対し、ランド円の実勢相場からかい離したレートを配信してしまったことにあります。
これによりロスカット取引等で多くの投資家たちが損失を被る事となりました。
当時の「くりっく365」側はこの異常事態に対し、「マーケットメイカーが提示した市場レートであり、システム障害によるものではない」とホームページ上でコメントしており、その対応に対し投資家のみならず海外の関係機関からも大批判を浴び、報道機関にも数多く取り上げられるという状況を招きました。
その後大批判を浴びた「くりっく365」はロスカットされた投資家の取引を取り消す等の救済措置がなされましたが、その措置は一部の顧客だけに施されたものであり、適用外となった投資家たちが銀行や東京金融取引所に対し賠償を求めるという事態となりました。
裁判では結果的に投資家たちの主張は認められる事はありませんでした。
今回の事例は、いかにFXが自己責任の世界であるかという厳しさがうかがえる事件だったと言えるのではないでしょうか。