岐阜県警は15日、十六銀行(本店・岐阜市)の春日井支店(愛知県)の元支店長代理、田中健二容疑者(45)=岐阜市六条大溝=を業務上横領の疑いで逮捕し、発表した。「FX(外国為替証拠金取引)に使った」と容疑を認めているという。
県警によると、田中容疑者は同行関ケ原支店で渉外の担当をしていた2011年3月17日と8月9日、岐阜県関ケ原町の会社経営の男性(74)に投資信託を勧めるなどして、男性の預金通帳などを入手。出納担当の行員に払い戻し手続きをさせて、計約280万円を横領した疑いがある。
十六銀行は今年7月、田中容疑者が約4500万円を着服したとして懲戒解雇処分にし、9月に県警に被害届を出していた。
朝日新聞 2015年10月15日掲載分
今回の事件は2011年、関ケ原支店での横領が容疑となっています。
田中氏は渉外担当で、顧客に対し「定期預金をまとめないか」などと持ち掛け支払伝票を書かせていたそうです。
その後2015年6月、顧客からの問い合わせがきっかけで不正が発覚しました。
翌月には懲戒解雇処分を受け、2015年10月15日、業務上横領の疑いで逮捕されています。
2016年3月11日に行われた裁判で弁護側は「社会復帰をさせて被害額を全額弁済させるべき」として執行猶予付きの判決を求めましたが、それに対し裁判所は「借金返済のために着服したという動機は身勝手で安易、銀行員としての立場を悪用した常習的な犯行で酌量の余地なし」と指摘し、田中氏に懲役2年6か月の実刑判決が言い渡されました。
着服の動機として田中氏は「FXに使った」と述べていますが、2011年当時の段階ですでに借金を抱えていたのかは不明です。
最終的には借金返済のために犯行を繰り返し、計4500万円もの金額を着服したとありますが、悪事に手を染めた当初はどのような状況だったのでしょうか。
FX取引きで大きな損失が出たために犯行に及んだ可能性もありますが、損切りを避けるための追証金に充てたとも考えられます。
結果的に5年間犯行を繰り返し続けた経緯を考えると、FXの取引だけで過去の損失を取り戻すことは叶わなかったのではないでしょうか。
今回の事例は、FXの現実の厳しさを物語る事件だったと言えるのかもしれません。